
香りが導く問い
夜の静けさの中で火を灯し、ハーブを刻んで油に浸す、精油に祈りを込めて瓶に雫を落とす──その行為には、言葉を超えた祈りがあります。
古くから魔女たちは植物とマジカルオイルを通じて、自然界の力と向き合ってきました。香りは単なる嗜好品ではなく、意志を宿すための媒介でもあります。日々の小さな営みの中に、この行いがどんな意味をもたらすのかを、静かに探ってみましょう。
植物とオイルが語るもの
1930年代のイギリスで、ジェラルド・ガードナーが出会った魔女たちは、ヴァーベインやミントの葉をオリーブ油に浸し、香りが深まるまで何度も漉していました。
その素朴な方法からは、「余計なものを加えず、植物の魂を引き出す」という思想が感じられます。
現在でもマジカルオイルの基礎となるキャリアオイルは、意図に応じて選ばれます。
オリーブ油は幸運や豊かさを、アーモンド油は感性や繁栄を、ホホバ油は癒やしや保護を支えるとされます。
植物もまたそれぞれの意味を持ち、ラベンダーは安眠、ローズは愛情、ミントは富、ローズマリーは守護と癒しを担います。
多くの魔女たちは、月の星座などに合わせてオイルを仕込み、願望に合わせて月の満ち欠けを選びます。
新月は始まり、上弦は成長、満月は力の極み、欠ける月は手放しと静けさを象徴します。
こうした象徴は、科学的な効能とも響き合いながら、マジカルオイル作りに静かな意義を与えてくれるのです。
実践 ──マジカルオイルを創り、日常に生かす
マジカルオイル作りの第一歩は、瓶を用意すること。
意図に合わせた乾燥ハーブや花、スパイスを瓶の半分から三分の二ほど入れ、選んだオイルで覆います。
香りを強めたいときは、精油を数滴。精油のみで作成すると、腐敗もしづらくなるのでお勧めです。(当店の、ウィッカンキャビネットのマジカルオイル講座の受講もお勧め)
そのまま暗く涼しい場所で2〜8週間置く「冷浸法」では、毎日軽く振って植物と油をなじませます。
時間がないときは、二重鍋で温める「温浸法」も便利です。数時間かけてゆっくりと香りを引き出します。
仕上げにハーブを漉して遮光瓶に移せば、世界にひとつだけのマジカルオイルが完成です。
たとえば──
安眠を願うならラベンダーとカレンデュラを満月の夜に、
守護を意図するならローズやローズマリーを欠けゆく月に、
豊かさを求めるならミントやヒマワリを月が満ちる時期に。
作ったマジカルオイルは、儀式用のナイフやカップに塗って浄化や意図の強化に使えます。
キャンドルに少量塗れば、火の力と香りが調和し、祈りが深まります。
お守り袋に滴らせて“エネルギーを与える”ようにしてもよいでしょう。
肌に使う場合は安全性を確かめ、手首や首筋にほんの少しだけ。
香りと触感を通じて、自分の中の意図が静かに広がっていくのを感じてください。
余韻としての一滴
マジカルオイル作りは、植物の力と自らの願いをゆっくりと溶け合わせる時間です。
瓶の中で月日を重ねるオイルは、思考を整え、日常に落ち着きをもたらします。
慎ましくも豊かなこの習慣を続けることで、暮らしの中に「小さな儀式の時間」が生まれるでしょう。
さっと手軽に塗るのも良いですし、静かな夜にキャンドルの炎を見つめながら優しくタッチするように塗るのも、あなたの魂に響きますので、素敵な時間となるでしょう。
もし道具や素材を選ぶときは、自分の手にしっくり馴染むものを探してみてください。
香りは目に見えませんが、その響きは、心の奥深くにまで届きます。
次回テーマ候補
次回は「満月儀式(エスバッツ)」を題材に、月と人の営みの関係について考察する予定です。
皆様の希望の内容があればリクエストしてくださいね。
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